Presentation materials for the JSFM annual meeting 2025 (in Japanese)
Abstract
Materials written in Japanese for a presentation titled "Isothermal Anelastic Approximation" given in the Japan Society of Fluid Mechanics (JSFM) annual meeting 2025
Full text
日本流体力学会年会 2025 等温非弾性近似 Isothermal Anelastic Approximation ○丸山清志,防衛大学校地球海洋学科,横須賀市走水 1-10-20 Kiyoshi Maruyama, Department of Earth and Ocean Sciences, National Defense Academy, Yokosuka, Kanagawa 239-8686, Japan This paper constructs a variant of the anelastic approximation; its energetics and the conditions for its applicability are also elucidated. It is shown that the Boussinesq approximation is reproducible as a limiting case of this variant. On the other hand, it also turns out that the variant is inapplicable to an ideal gas. 1. はじめに 非弾性近似は,熱的に成層した理想気体の運動を記述するた めに,Ogura & Phillips (1962) によって考案された (1).この 近似は,気体の圧縮性を部分的に取り入れながら,一方で支配 方程式の解から音波を排除する. 丸山 (2023) は非弾性近似を任意の流体に適用可能な形に再構 築した (2).その結果この近似は,自由対流を研究する際にしば しば用いられる古典的なブシネスク近似と,直接的な関係を持 たないことが見出された. 本論文の目的は,非弾性近似の一亜種を提示することである. ブシネスク近似は,この「等温」非弾性近似の一極限として再現 可能である.ただし,この近似は,理想気体には適用できない ことが明らかになる. 2. 等温非弾性近似 一様重力場中での非粘性流体の運動を考える.流体は固定さ れた有限領域 Ω中にあり,この領域には z軸が鉛直上向きに取 られているものとする.以後,正の z軸方向の単位ベクトルを kで表す. 2.1 運動方程式 流体の速度を uとするとき,運動方程式は Du Dt =−∇p/ρ −gk(1) で与えられる.ここで D/Dt は物質微分を,p及び ρは流体の 圧力と密度を,gは重力加速度を表す. さて今,流体の比ギブズ自由エネルギーを φで表すことにし よう.このとき φは dφ =−sdT +vdp (2) なる関係式を満足する.ここに s及び Tはそれぞれ流体の比エ ントロピー及び温度を表し,v= 1/ρ は流体の比容である.以 下では,全ての熱力学量は φ及び Tの既知関数と見なされる. 関係式 (2) を用いると運動方程式 (1) は Du Dt =−∇φ−s∇T−gk(3) と書き直せる.ここで φ及び Tを φ=φ0+φ′, T =T0+T′(4) のように分解しよう.ただし φ0及び T0は,c1及び c2を定数 として,次式で定義される: φ0=−gz +c1, T0=c2.(5) その結果,(3) は以下のように表現されることになる: Du Dt =−∇φ′−s∇T′.(6) しかるに,φ及び Tの関数と見なすとき,sもまた以下のよ うに分解される: s=s0+s′.(7) ただし s0は次式で与えられている: s0=s(φ0, T0).(8) ここで以下の仮定を導入しよう: |s′/s0| ≪ 1.(9) この仮定の下で (6) は以下のように近似される: Du Dt =−∇φ′−s0∇T′.(10) さらに恒等式 s0∇T′=∇(s0T′)−T′∇s0を用いると Du Dt =−∇(φ′+s0T′) + T′∇s0(11) を得る.これが等温非弾性近似の下での運動方程式であり,最 後の項が当該近似における浮力を表している. 2.2 連続の式 分解 (4) に鑑みれば,流体の密度 ρも ρ=ρ0+ρ′(12) と分解される.ただし ρ0は次式で定義されている: ρ0=ρ(φ0, T0).(13) ここで次の仮定を置くことにしよう: |ρ′/ρ0| ≪ 1.(14) このとき ρは以下のように近似できる: ρ=ρ0.(15) 連続の式 ∂ρ/∂t +∇ · (ρu) = 0 に(15) を代入して ∇ · (ρ0u) = 0 (16) なる等温非弾性近似の下での連続の式を得る. 1
日本流体力学会年会 2025 2.3 断熱方程式 熱伝導を無視するとき,熱輸送の一般式 (3) は ρ0TDs Dt = 0 (17) となる.ただし近似 (15) を用いた.この方程式は,分解 (4) 及 び(7) を考慮すると,プライムのついた変数について一次まで の近似で,以下のように書ける: ρ0T0 Ds0 Dt +ρ0T′Ds0 Dt +ρ0T0 Ds′ Dt = 0.(18) これより,Ds0/Dt =u· ∇s0である故,次式を得る: ρ0T0 Ds′ Dt =−ρ0T0u· ∇s0−ρ0T′u· ∇s0.(19) これが等温非弾性近似の下での断熱方程式を与える. しかしながら,方程式系を閉じさせるには,(19) 式中の s′を φ′及び T′を用いて表現する必要がある.そのためにまず,以 下の熱力学関係式に注目しよう: (∂s/∂φ)T=−β, (∂s/∂T )φ=cp/T −βs. (20) ここに β=v−1(∂v/∂T )pは流体の熱膨張係数,cpは定圧比熱 である.これより,φ′及び T′について一次までの近似で,s′は 以下のように表現される: s′= (∂s/∂φ)T|(φ0,T0)φ′+ (∂s/∂T)φ|(φ0,T0)T′ =−β0φ′+ (cp0/T0−β0s0)T′.(21) ただし β0及び cp0を次式で定義した: β0=β(φ0, T0), cp0=cp(φ0, T0).(22) 以上で等温非弾性近似の定式化は完了した. 2.4 等温非弾性近似の下でのエネルギー論 次いで等温非弾性近似の下での流体のエネルギー収支を考察 しよう.まずは次式で与えられる流体の比内部エネルギー eに ついて考えることにする: e=φ−p/ρ +Ts. (23) 圧力 pは,φ及び Tの関数と見なすとき, p=p0+p′(24) と分解される.ただし p0は次式で定義されている: p0=p(φ0, T0).(25) 分解 (4), (7), (24) を(23) に代入し,近似 (15) を用いると,プ ライムのついた変数について一次までの近似で e= (φ0−p0/ρ0+T0s0)+(φ′−p′/ρ0+T0s′+s0T′).(26) が得られる. ところで,(2) より,以下の熱力学関係式が従う: (∂p/∂φ)T=ρ, (∂p/∂T )φ=ρs. (27) 従って,φ′及び T′について一次までの近似で,p′は p′= (∂p/∂φ)T|(φ0,T0)φ′+ (∂p/∂T)φ|(φ0,T0)T′ =ρ0φ′+ρ0s0T′.(28) と表現される.この表式より,次式が得られる: e= (φ0−p0/ρ0+T0s0) + T0s′.(29) ここで (29) の物質微分を取り,ρ0を乗じると ρ0 De Dt =ρ0u· ∇(φ0−p0/ρ0) + ρ0T0u· ∇s0+ρ0T0 Ds′ Dt (30) を得る.さらに (19) を代入すると次式が従う: ρ0 De Dt =∇·{ρ0(φ0−p0/ρ0)u} − ρ0T′u· ∇s0.(31) ただし (16) を用いた.ところで ρ0De/Dt が ρ0 De Dt =ρ0 ∂e ∂t +ρ0u· ∇e=∂ ∂t(ρ0e) + ∇ · (ρ0eu) (32) と書けることに注意しよう.よって,(29) を用いると,(31) は 以下のように書き直せる: ∂ ∂t(ρ0e) + ∇·{ρ0T0(s0+s′)u}=−ρ0T′u· ∇s0.(33) 最後に,領域 Ωに亘って (33) を積分すると d dt ZΩ ρ0e dV =−ZΩ ρ0T′u· ∇s0dV (34) を得る.ただし Ωの境界上で uの法線成分はゼロになるものと 仮定した.これが流体の内部エネルギーの時間変化を記述する 方程式である. 一方,流体の位置エネルギーは不変である: d dt ZΩ ρ0gz dV = 0.(35) この事実は近似 (15) の論理的帰結である. 続いて流体の運動エネルギーについて検討しよう.そのため に,まず運動方程式 (11) を(28) を用いて Du Dt =−∇(p′/ρ0) + T′∇s0(36) と書き直す.これと ρ0uの内積を取ると,簡単な操作の後に, 次式を得る: ∂ ∂t(1 2ρ0|u|2)+∇·ρ0(1 2|u|2+p′/ρ0)u=ρ0T′u·∇s0.(37) これを領域 Ωに亘って積分すると d dt ZΩ 1 2ρ0|u|2dV =ZΩ ρ0T′u· ∇s0dV (38) が従う.かくして流体の運動エネルギーの時間変化を記述する 方程式が得られた.右辺の項は等温非弾性近似における浮力に よってなされる仕事を表している. 以上で導かれたエネルギー方程式 (34), (35), (38) を全て加え 合わせると,最終的に次式が得られる: d dt ZΩ ρ01 2|u|2+gz +edV = 0.(39) すなわち流体の全エネルギーは保存される.この結果は,等温非 弾性近似がエネルギー保存則と整合的であることを示している. さらに (34) と(38) を比較すると,等温非弾性近似における 浮力のなす仕事が,非弾性近似におけるそれと同様に (2),運動 エネルギーと内部エネルギー間のエネルギー変換に対応するこ とが見て取れる.この結論は,丸山 (2014) によりブシネスク近 似における浮力について得られたものと一致している (4). 2
日本流体力学会年会 2025 2.5 等温非弾性近似の適用可能性 等温非弾性近似は二つの仮定 (9) 及び (14) に基づいて導かれ た.以下での我々の目標は,いかなる条件の下でこれら二つの 仮定が正当化され得るかを明らかにすることである.仮定 (14) の考察から始めよう. まず,以下の熱力学関係式に注目する: (∂ρ/∂φ)T=ρ(γ/a2), (∂ρ/∂T)φ=ρs(γ/a2)−β.(40) ここで γは比熱比,aは音速である.これら関係式を用いると, (14) のρ′は,φ′及び T′について一次までの近似で,次のよう に表現できる: ρ′= (∂ρ/∂φ)T|(φ0,T0)φ′+ (∂ρ/∂T)φ|(φ0,T0)T′ =ρ0(γ0/a2 0)φ′+ρ0s0(γ0/a2 0)−β0T′.(41) ただし,以下の記法を導入した: γ0=γ(φ0, T0), a0=a(φ0, T0).(42) この ρ′に対する表現により,仮定 (14) の左辺は |ρ′/ρ0|=O{γ0(gH/a2 0)(∆φ′/gH)} +O{γ0(gH/a2 0)(s0∆T′/gH)}+O(β0∆T′)(43) と見積もられる.ただし Hは流体が占める領域 Ωの鉛直方向 の広がりを,∆φ′及び ∆T′はφ′及び T′の特徴的なスケールを 表す.我々はここで,丸山 (2023) に従い (2),次の条件が成立 するものと仮定する: (gH)1/2/a0≤O(1).(44) このとき,γ0=O(1) である故に,(14) は以下の条件の下で満 足されることになる: ∆φ′/gH ≪1,(45) s0∆T′/gH ≪1,(46) β0∆T′≪1.(47) 他方,(21) を用いると,(9) の左辺を以下のように見積もるこ とができる: |s′/s0|=O{(cp0/s0)(Γ0H/∆T′)(∆T′/T0)(∆φ′/gH)} +O{(cp0/s0)(∆T′/T0)}+O(β0∆T′).(48) ここに Γ0=β0T0g/cp0は断熱減率を表す.流体の運動が断熱 的であることから,Γ0,H, ∆T′の間には,以下に示す条件が成 立するものと期待される: Γ0H/∆T′≤O(1).(49) さらに,cp0=T0(∂s/∂T)p|(φ0,T0)なので, cp0/s0≤O(1) (50) と仮定するのが合理的であろう.このとき (48) より,(9) は, (45) 及び (47) と共に ∆T′/T0≪1 (51) なる条件が成立すれば満足されることが分かる. ところで,(6) より, |∇φ′| ≤ |∂u/∂t|+|(u· ∇)u|+|s∇T′|(52) なる不等式が従うことに注意しよう.流体の運動を特徴づける 長さスケールを Lとすると, |∇φ′|=O(∆φ′/L),|∇T′|=O(∆T′/L) (53) と書くことができる.他方,Uを運動の特徴的な速度スケール とすると, |∂u/∂t|=O(U/τ),|(u· ∇)u|=O(U2/L) (54) が得られる.ただし τは運動の特徴的な時間スケールを表す. ここで,(5) の定数 c1及び c2が,以下に示す条件を満たすよう に選ばれているものと仮定する: s/s0≤O(1).(55) このとき,(52), (53), (54) から分かるように, U/(gH)1/2≪1,(L/τ)/(gH)1/2≪1 (56) が(46) と共に成立すれば,(45) は満足される. 最後に (46) が次のように書けることに注意しよう: β0∆T′≪(cp0/s0)(Γ0H/∆T′)(∆T′/T0).(57) これより,β0∆T′≪1なる条件 (47) は,(46), (49), (50), (51) が満たされれば成立することが分かる. 結局,等温非弾性近似は,以下の条件の下で適用可能となる: (44), (46), (49), (50), (51), (55), (56). 3. 浅い流体層への適用 本節において我々は,等温非弾性近似を「浅い」流体層に適用 する.目標は,ブシネスク近似を等温非弾性近似の一極限とし て再現することである. 前節で考えた流体の密度 ρ=ρ0は ∇ρ0= (∂ρ/∂φ)T|(φ0,T0)∇φ0+ (∂ρ/∂T)φ|(φ0,T0)∇T0 =−(ρ0γ0g/a2 0)k.(58) から分かるように,高度とともに変化する.しかしながら ρ0 は,以下の条件が満たされる場合には,一定とみなして差し支 えない: ∆ρ0/ρ0≪1.(59) ただし ∆ρ0は,流体の鉛直方向の広がり Hに亘る ρ0の変化の スケールである.このスケールについては ∆ρ0=|∇ρ0|H=ρ0γ0gH/a2 0(60) と置くのが妥当であろう.よって ρ0は,γ0=O(1) である故, 以下の条件の下では一定とみなし得る: (gH)1/2/a0≪1.(61) このとき,連続の式 ∂ρ/∂t +∇ · (ρu) = 0 は ∇ · u= 0 (62) に帰着する.一方,(36) なる形式に書き直された運動方程式は, さらに以下のように書き直される: Du Dt =−∇p′/ρ0+β0T′gk.(63) ただし (5) 及び (20) から得られる次式を用いた: ∇s0= (∂s/∂φ)T|(φ0,T0)∇φ0+ (∂s/∂T)φ|(φ0,T0)∇T0 =β0gk.(64) 3
日本流体力学会年会 2025 連続の式 (62) と運動方程式 (63) は,ブシネスク近似の下で成 立するものと同じものである. 次に熱輸送の一般式 (17) に注目する.これは,(20) を考慮す ると,φとTを用いて −ρ0βT Dφ Dt + (ρ0cp−ρ0βTs)DT Dt = 0 (65) と表現される.しかるに,この式中の cp及び βは,分解 (4) を 踏まえると,以下のように分解できる: cp=cp0+c′ p, β =β0+β′.(66) かくして我々は,プライムのついた変数について一次までの近 似で,次式を得る: ρ0cp0 DT′ Dt =ρ0β0T0Dφ0 Dt +T′ T0 Dφ0 Dt +β′ β0 Dφ0 Dt +Dφ′ Dt +s0 DT′ Dt . (67) さて今,φ0の変化のスケールを ∆φ0で示すことにしよう. すると (5) から明らかに ∆φ0=gH (68) が成立する.一方,φ′及び T′について一次までの近似で,β′ は以下のように表現される: β′= (∂β/∂φ)T|(φ0,T0)φ′+ (∂β/∂T)φ|(φ0,T0)T′.(69) これより β′/β0は,次のように見積もられる: |β′/β0|=OgH(∂β/∂φ)T|(φ0,T0)/β0(∆φ′/gH) +OT0(∂β/∂T)φ|(φ0,T0)/β0(∆T′/T0).(70) ここで,以下の条件が成り立つものと仮定しよう: gH(∂β/∂φ)T|(φ0,T0)/β0≤O(1), T0(∂β/∂T)φ|(φ0,T0)/β0≤O(1).(71) このとき,等温非弾性近似の下で成立する条件 (45), (46), (51) を踏まえると,(67) の中括弧内の項のうち,プライムのついた 変数を含む項は,全て第1項に比して無視することができる. かくして我々は ρ0cp0 DT′ Dt =ρ0β0T0 Dφ0 Dt (72) を得る.右辺の項は −ρ0β0T0gu·kと書けるが,流体の鉛直運 動に伴う断熱加熱・冷却を表している. しかしながら (72) 右辺の項も,条件 Γ0H/∆T′≪1 (73) が成立すれば無視することができる.この場合 (72) は ρ0cp0 DT′ Dt = 0 (74) に帰着する.これはブシネスク近似の下での断熱方程式と一致 している. 4. まとめと議論 非弾性近似の一亜種である等温非弾性近似を定式化した.こ の近似の下での流体のエネルギー論,ならびに近似の適用可能 性条件についても議論した.さらに,ブシネスク近似が,当該 近似の一極限として再現可能であることも示された. 4.1 運動方程式の別形式 等温非弾性近似の下での運動方程式は,それぞれ (28) 及び (41) によって定義される p′及び ρ′を用いて Du Dt =−∇p′/ρ0−(ρ′g/ρ0)k(75) という形に表現され得る.以下で説明するとおり,この形の運 動方程式は (36) から導くことができる. まず (36) の右辺第1項を −∇(p′/ρ0) = −∇p′/ρ0+ (p′/ρ0)(∇ρ0/ρ0) (76) のように書き換える.ここで p′/ρ0=φ′+s0T′であること,な らびに ∇ρ0/ρ0=−(∂ρ/∂φ)T|(φ0,T0)(g/ρ0)kと書けることに 注意すると,次の表式が得られる: −∇(p′/ρ0) = −∇p′/ρ0−(∂ρ/∂φ)T|(φ0,T0)φ′ +s0(∂ρ/∂φ)T|(φ0,T0)T′(g/ρ0)k.(77) 他方,(36) の右辺第2項も以下のように書き直せる: T′∇s0=−ρ0(∂s/∂φ)T|(φ0,T0)T′(g/ρ0)k.(78) 表式 (77) 及び (78) を(36) に代入すると Du Dt =−∇p′/ρ0−(∂ρ/∂φ)T|(φ0,T0)φ′ +{∂(ρs)/∂φ}T|(φ0,T0)T′(g/ρ0)k. (79) を得る.しかるに,(27) より次の関係式が従う: {∂(ρs)/∂φ}T= (∂ρ/∂T )φ.(80) この関係式を (79) に代入して,次式を得る: Du Dt =−∇p′/ρ0−(∂ρ/∂φ)T|(φ0,T0)φ′ +(∂ρ/∂T )φ|(φ0,T0)T′(g/ρ0)k. (81) これは,(41) に照らせば,(75) と同じ方程式である. 以上の結果にも関わらず,等温非弾性近似の下での流体の密 度は,ρ0+ρ′ではなく ρ0により与えられる.この事実を本小 節の最後に強調しておきたい. 4.2 条件 (46) について 等温非弾性近似の適用可能性条件のうち,特に (46) に注目し よう.この条件は (57) なる形に表現できる. 条件 (49) と(50) が成立する限り,(57) は β0∆T′≪∆T′/T0(82) を要求する.これは過度に制限的な条件である.実際,理想気 体については,β0= 1/T0が成立するので,この条件が満足さ れることは決してない.従って等温非弾性近似は,理想気体に は適用できないことになる. しかしながら,(46) なる条件は,ブシネスク近似の適用可能 性条件としては不要である.それは,より穏やかな条件 (47) に よって置き換えられる (5).従ってブシネスク近似は,理想気体 にも適用できる. 以上より我々は,次の結論へと導かれる.すなわち,ブシネ スク近似は,等温非弾性近似の一極限として再現可能ではある ものの,それは,非弾性近似のこの亜種に,ごく部分的に含まれ ているに過ぎない. 4
日本流体力学会年会 2025 参考文献 (1) Ogura, Y. and Phillips, N. A., “Scale analysis of deep and shallow convection in the atmosphere,” J. Atmos. Sci., 19 (1962), 173–179. (2) 丸山清志, “非弾性近似,” Zenodo, https://doi.org/10.5281/zenodo.14621801, (2023). (3) Landau, L. D. and Lifshitz, E. M., “Fluid Mechanics,” 2nd ed., Butterworth-Heinemann (1987). (4) 丸山清志, “Boussinesq 近似の下での流体のエネルギー論,” Zenodo, https://doi.org/10.5281/zenodo.4013781, (2014). (5) 丸山清志, “Boussinesq 近似の合理的導出,” Zenodo, https://doi.org/10.5281/zenodo.4013785, (2019). 5